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新オーナーにはおめでとうと言いたい。ティファニーサインのモバードはEverything But The Houseにて2
パテック フィリップのRef.1485はLoupeThisで1万1220ドル(日本円で約170万円)に到達した。そしてティファニー モバードの新オーナーからは昨日リストショットをもらったところだ。この時計もいい家に収まって何よりである。また数週間前までさかのぼるが、ジャン=ルー・クレティエン(Jean-Loup Chrétien)氏のオメガ スピードマスターもRRオークションにて10万6409ドル(日本円で約1630万円)で落札された。

それでは、今週のピックアップに移ろう!

カルティエ ロンドン タンク L.C. エクストラフラット、1973年製
A Cartier Tank LC for London
スーパーコピー代引き2週連続で、同コラムの冒頭に素晴らしいヴィンテージカルティエ タンク L.C.を取り上げることに対して、謝罪するつもりはない。この流れは市場が決めるものであり、私の力でどうにかなるものではないのだから。今回も非常に興味深いタンク L.C.のバリエーションが、イギリスのFellowsオークションに出品されている。実のところ、これまでに見たことのないモデルだ。ヴィンテージのカルティエに詳しい方なら、1960年代から1970年代初頭にかけてロンドンでつくられた時計が、どれほどユニークかを知っているだろう。第2次世界大戦後、ジャン=ジャック・カルティエ(Jean-Jacques Cartier)が父親の跡を継いでカルティエ ロンドンを運営するようになり、1960年代初頭には、パリで製造された時計を輸入し続けるのではなく、ロンドンで腕時計の製造を開始することを決断した。これらの時計はひとつひとつが手作業でつくられ、デザインもまた60年代ロンドンの“躍動の時代”らしい独特のスタイルを備えている。

話を簡単にまとめると、カルティエは1972年に再統合を果たしている。先週のタンク L.C.に触れた際に言及した“買収前のカルティエ”とは、この1972年の再統合を指している。ここが重要な点で、今回注目している時計にはロンドンのホールマークが刻印されており、1973年の製造であることを示している。そこで私は思わず、“おや、これは妙だな”と感じた。しかし掲載されている写真やFellowsチームから提供された別の写真を確認する限り、この時計は問題なさそうだ。外観もホールマークも正しく見える。

A Cartier London Tank LC
さらに興味深いのは、このタンク L.C.のケース構造である。ケースサイドや裏蓋にネジが見当たらないため、タンク L.C. エクストラ・プラ(フランス語で超薄型を意味する)のこのケーススタイルは非常に珍しく、コレクターのあいだでは“隠れネジ”ケースとして知られるようになった。

製造年に若干の謎が残るものの、このタンク L.C.のコンディションはきわめて堅固だ。状態のよさに加え、シリアルナンバーと一致するロンドンホールマークの入ったデプロワイヤントクラスプ、そして“大きめ”な23mm×30mmのケースサイズを考えると、このオークションは順調に成立すると思われる。すでに事前入札が入っており、当初のエスティメートである2000ポンド〜3000ポンド(日本円で約39万〜60万円)ははるかに上回った。

Hallmarks on a Cartier London Tank LC
この1973年製カルティエ ロンドン タンク L.C.は、10月31日(木)の午前5時(米国東部時間)に開催されるFellowsウォッチオークションのロット29として出品される。記事執筆時点での入札額は1万5500ポンド(日本円で約310万円)に達している。

ロジャー・W・スミス シリーズ2 オープンダイヤル 00番、2010年代製
A Roger Smith Series 2 Open Dial
今週のピックをまとめている時点では、正直なところ、楽しいけれど控えめな価格帯のラインナップだと感じていた。しかし、そこに突如としてロジャー・スミス(Roger Smith)氏の時計が現れたのだ。先月取り上げたフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)のデュアリティ(ちなみにまだ販売中)と同様に、Bring a Loupeがネット上で販売中の“ベストな”時計を特集するコーナーである以上、どうしてもこの時計を紹介しなければならない。腕を捻られた気分だが、ロジャー・スミスのシリーズ2について数段書かざるを得ないようだ。なんともうれしい悲鳴である!

彼は故ジョージ・ダニエルズ(George Daniels)博士の弟子であり、現代を代表する優れた時計職人のひとりとして広く認識されている。スミス氏は過去20年以上をマン島でのウォッチメイキングに費やし、ダニエルズが情熱を注いで開発したコーアクシャル脱進機を改良した。ロジャー・スミスのシリーズ2 オープンダイヤルは2008年に発表され、初期モデルが顧客に納品されたのは2010年とされる。総生産数は10本にも満たず、非常にレアなモデルだ。この特別なシリーズ2 オープンダイヤルは、元Bring A Loupeのコラムニストであるエリック・ウィンド(Eric Wind)氏が手がけるWind Vintageにて提供。ナンバーは00番で、40mm径のプラチナケースに収められている。

Roger Smith Series 2 Open Dial movement
興味深いことに、“プロトタイプ風”のシリーズ2 オープンダイヤルが市場に出たのは今回が初めてではない。昨年、香港のWristcheckが02番を販売しており、これには“R W Smith”のサインプレートが“文字盤”側にないなど、ユニークな特徴があった。またケースも40mmのホワイトゴールド製であった。このようなスミス氏の時計には、モデルごとにわずかな違いが見られる。こうした微妙な違いが見られるのは、すべての時計が伝統的な英国式の手作業で製造されているからこそであり、ある意味で当然のことと言える。

Wristcheckで販売された02番の価格は115万ドル(当時の相場で約1億6160万円)からスタートした。あえて直接価格に触れるのは、相対的に今回のモデルが“お買い得”に見えるからだ。シリーズ2 オープンダイヤル唯一の公の取引は、2022年にフィリップス・ニューヨークで行われた09番で、40mmのプラチナケースが付いたものが結果84万700ドル(当時の相場で約1億1055万円)で落札された。また、現在ロンドンのA Collected Manでも1本が販売中で、モデルナンバーは不明だが、より標準的な仕様と考えられている。ACMの提示価格は64万5000ポンド(日本円で約1億2840万円)である。

Wind Vintageで販売されているロジャー・スミス シリーズ2 オープンダイヤル 00番は59万9000ドル(日本円で約9190万円)で販売中。詳細はこちらから。

ジュベニア アーキテクト ギュブラン向けモデル、1960年代製
A Gubelin Juvenia
ジュベニア アーキテクトは、ヴィンテージ界においてオッドボール(奇抜)な時計の代表格とされる一品である。シンプルな手巻きETAムーブメントを搭載した時刻表示のみの時計だが、デザイン面ではその常識を超えている。このユニークなタイムオンリーモデルは、1940年代から1960年代にかけてきわめて少量のみ生産された。こうしたデザインは、ときには大成功を収めるか、あるいはまったく人気が出ないかのどちらかだが、アーキテクトは後者の道をたどったようだ。そのため、プロトラクター(Protractor、分度器)やセクスタント(Sextant、六分儀)の名でも知られるこのモデルは、当時の売れ行きは低調だったものの、現在のヴィンテージ市場ではその希少性によりカルト的な人気を誇っている。

同ブランドは、アリスモというドーナツ型のプレキシガラスクリスタルを備えた回転計算尺付きの時計など、独創的な腕時計デザインをつくり出すことにも長けていた。これにはジュベニアらしいユニークさが光っている。余談だが、ジョニー・デップ(Johnny Depp)氏は2008年、ジュベニア アーキテクトをつけてエスクァイアの表紙を飾った。一見、複雑そうに見えるアーキテクトだが、実は読み取りが容易だ。黒い三角形がついたプロトラクター針が時刻を示し、金色の矢印が分を、そして(適切な表現が見つからないが)赤い部分を持つもう一方の針が秒を追う仕組みだ。

A Gubelin Juvenia
これまでにもジュベニア アーキテクトを見たことはあるが、ルツェルンを拠点とする、170年を超える歴史を持つリテーラー、ギュブランのサインが入ったものを見るのは初めてだ。ギュブランとそのサインが入った時計の大ファンとして、このひと工夫が、すでに魅力的な時計をさらに魅力的にしている(私にとっては)。6500ドル(日本円で約100万円)の使い道としては悪くない選択肢だ。少なくとも、同じ時計を身につけている人に出会うことはまずないだろう。

“USA, United States”と記載されたeBayの出品者が、ギュブランのサイン入りジュベニア アーキテクトを即決価格6450ドル(日本円で約100万円)で出品。詳細はこちらから。

ファーブル・ルーバ ビバーク Ref.53203 エディ・バウアー、1960年代製
A Favre Lueba
小売店のサインが入った珍しいヴィンテージウォッチという流れのまま、エディ・バウアー共作のファーブル・ルーバ ビバークに移ろう。そう、“アメリカのアウトドアレクリエーションブランドでシアトルに本社を構える”(Wikipediaより)あのエディ・バウアーだ。さらに言うと、かつてフォードとコラボして限定版のブロンコやエクスプローラーを出したブランドである。これまで探していたわけではないが、エディ・バウアーの名前が文字盤に刻まれたヴィンテージウォッチには出合ったことがない。この時計はとても珍しいものと考えられるため、誰かがわざわざ文字盤に名前を刻んでからGoodwillに寄付したとは考えにくい。

ビバークは腕時計であり気象計測器でもあると言えるほどユニークな存在であり、1960年代の時計製造における風変わりな腕時計の先駆けであった。1962年に登場したこの時計は、世界で初めてアネロイド気圧計を搭載した腕時計であり、ある意味で4分間マイルや月面着陸と同じくらい画期的な、初の達成と見なされるだろう…真面目に言うと、この機能は当時の登山家にとって非常に役立つものだった。ビバークは彼らが山を登る際に抱えていた課題を解決したのである。当時のポケット型高度計は、氷点下の環境だととくに読み取りにくく操作も困難だったが、この時計はその機能をひと目で確認できるという利便性を提供した。この時計を愛用していた著名なユーザーには、イタリアの登山家ワルター・ボナッティ(グランド・ジョラス登頂時)や、南極探検で使用したフランス人探検家ポール=エミール・ヴィクトルがいる。

このビバークはShopGoodwill.comに出品されており、オークションは10月30日(水)の午後10時55分(米国東部時間)に終了する予定だ。記事が公開された時点で、入札額は1752ドル(日本円で約27万円)に達している。詳細についてはこちらをチェックして欲しい。また、この時計を出品したGoodwillはワシントン州のマウント・レーニア近郊に位置しており、その場所柄も考慮すると興味深い背景が加わる!

追伸: このヴィンテージのオメガ シーマスター300を見てほしい。同じくShopGoodwill.comに出品されているものだが、かなりの汚れが付着している。少なくとも、販売前に時計をきれいにしているわけではないことが分かる!

ホイヤー オータヴィア ダッシュボードタイマーセット、1950年代製
著名なヴィンテージホイヤーのエキスパートであり、Talking Watchesにも登場したジェフ・スタイン(Jeff Stein)氏が、ホイヤーに特化したリファレンスサイトをOnTheDash.comと名付けたのには理由がある。当然ながら、こうしたダッシュボード用タイマーがその理由だ。各時計ブランドは、マーケティングでさまざまな世界に結びつけようとするが、ホイヤーのモータースポーツとの関係は単なる宣伝ではなく、実際に深い歴史がある。ホイヤーとモータースポーツの結びつきは、特に1950年代のダッシュボードタイマーにまでさかのぼる。この時代のタイマーは、レーシングシーンでのホイヤーの存在を象徴する重要なアイテムだ。

ホイヤーの腕時計は伝説的なドライバーたちによって身につけられなど目立つ存在であったが、ダッシュボードクロックもまたカルト的な人気を集めている。こうしたタイマーの製造は1930年代にまでさかのぼる。いずれのツールウォッチにも言えることだが、これらは実用性を重視してデザインされていた。視認性と使いやすさが最優先であり、そのために文字盤には多量の夜光塗料が使用され、加えて中央のリューズ・プッシャーには大きな溝が刻まれている。これにより、ドライビンググローブを装着したままでもグリップしやすくなっているのだ。

ホイヤー オータヴィア タイマーは同社トップクラスのモデルで、12時間積算計クロノグラフ機能を備えていた。通常はオータヴィアと、ヘルブ(8日巻きムーブメントを搭載したクロック)やマスタータイムといったシンプルな時計を組み合わせたセットが多いのだが、今回のようにオータヴィアがふたつ揃ったセットは珍しい。オータヴィアがふたつあれば、2台の車を同時に計測することができる。そのため、このセットはダッシュボードに取り付けられていたものではなく、公式タイムキーパーのための装備であった可能性がある。私はタイムキーパーのクリップボードやテーブルに取り付けられていたのではないかと考えている。

ノースカロライナ州シャーロットにいるeBay出品者が、ホイヤーのオータヴィア ダッシュボードタイマーセットをオークション形式で出品しており、開始価格は2750ドル(日本円で約43万円)である。確実に手に入れたい場合は、即決価格の3750ドル(日本円で約58万円)にて購入することも可能。

2023/09/27(水)


ヴィンテージのモバードにもっと注目すべき理由
ヴィンテージウォッチの愛好家10人に特に価値のある時計について話を聞けば、確実に1970年代以前のヴィンテージモバードの話が出てくるはずだ。実際、私と時計について10分以上話するなら私自身このブランドについて触れるのは間違いない。少数だが声の大きな支持者たちからすると、ヴィンテージモバードはほかのどのブランドにも勝る価値と品質の両立を示すものなのだ。

 昔からヴィンテージモバード愛好家のコミュニティは存在していた。私は以前、素晴らしいモバードの個体がオークションに出ると、入札するのは世界で唯一このカテゴリのチェックを続けているいつもの4人だと冗談を言っていた。もし私がいいモバードを買い逃したとしても、2通ほどメールを送れば誰が私を打ち負かしたのか見つけることができたのだ。しかし状況は変わり始めている。過去1年ほどのあいだに、ヴィンテージモバードのコンテンツが天上の偉大なアルゴリズムによってますます多くのコレクターのスマートフォンに届けられるようになってきた。今日、私はこの秘密を共有せざるを得ないと感じている。なぜなら、その秘密はすでに広まってしまっているからだ。

two vintage Movados
時間表示機能のみのcal.75のペア。Image courtesy of Jacob Hillman, @hillman.watches

 私は来る日も来る日もほぼ1日中ヴィンテージウォッチをチェックしているのだが、そのなかで何度もモバードに戻ってきてしまう。スペックはさておき(とはいえこの記事ではスペックについて多くを語るつもりだが)、ヴィンテージモバードはそのひとつひとつもさることながら全体として素晴らしいものだ。私は10年間モバードを収集してきたが、それはこの時代の最高の時計のいくつかがモバードであったからだ。モバードと“クール”という言葉は多くの愛好家にとって結びつきにくいものであるかもしれないが、それは間違っていると私は伝えたい。現代のモバードはその魅力を失いつつあるかもしれないが、このブランドの歴史はほかのどのブランドにも負けないほど豊かだ。元の栄光を取り戻すには遅すぎるなんて言っているのは誰だ? 適切な方法で行えば、ヘリテージにインスパイアされたモバードのリリースは本当に価値のあるものとなるだろう。

“Hey Hodinkee! そのカルティエ スーパーコピー時計が高品質であると分かる理由はなんだ?”
 時計、特にヴィンテージウォッチにおいて品質を定義することは容易ではない。ここで同僚のマーク・カウズラリッチが好んでい引用する最高裁判所判事ポッター・スチュワート(Potter Stewart)の言葉、「見れば分かる」を使いたいところだが、私たちが“品質”として認識するものの多くはその時計の見た目を気に入っているかどうかと混同されてしまっている。文字盤からケースサイズに至るまで、デザインの好みは主に主観的なものであり、品質とはほとんど関係がない。品質とは、時計のパーツの総体を吟味することによって最も適切に評価されるものなのだ。

 私は品質を相対的なものと見ている。マクロレベルで見ると“優れたムーブメント”とは何かや、卓越した仕上げをどう定義するかの決定は困難を極めるが、特定の時代において同業他社が製造していたほかの時計と比較して、個々のパーツを評価することは簡単だ。私自身は(多くのヴィンテージウォッチを取り扱ってきた経験から)ヴィンテージのモバードを非常に高品質であると感じている。パーツごとにそのクオリティの高さを証明してみせよう。

ムーブメントについて:“インハウス”ムーブメントが取り沙汰される前から自社開発に取り組んでいた
a Movado advertisement
 1969年にゼニスおよびモンディアと合併するまで、モバードはほぼすべてのキャリバーを完全に自社で開発していた。1900年から1969年までにモバードにはスイスで少なくとも98件の特許が認められ、その多くはムーブメントの開発に関連するものであった。最も注目すべき特許は1912年の“ポリプラン”の開発に関するもので、このモデルは非常に長い曲線を描いた初期の腕時計であり、Cal.400はケースと一緒にカーブするように3つの平面で設計された、細長く湾曲したユニークなムーブメントであった。この驚くべきムーブメント以外にも、モバードは腕時計の分野でいち早く大きな功績を挙げていたという点で評価に値する。2冊のカタログが1912年と1915年に発行されるあいだにモバードは少なくとも704種のモデルを提供しており、そのうちの436モデルには文字盤に“Chronométre”の文字が入っている。

 モバードの真価はごくありふれたモデルにこそ表れている。特に注目すべきは手巻き式のムーブメントであり、1910年代から1969年に至るまで非常に類似した特徴的な構造を共有している。半円(スカラップ)状の受けにはふたつの切り欠きがあり、これはこの時代のほぼすべてのムーブメントに見られる。

a bunch of vintage movements
(左から)モバードのCal.150MN、オメガのCal.30T2、ロンジンのCal.12.68Z、パテックのCal.12-400、モバードのCal.126。

 この時期のムーブメントの構造上、Cal.150MNは特にラウンド型のメンズウォッチに最も頻繁に採用されてきた。オメガCal.30T2やロンジンCal.12.68Zのような当時を代表するムーブメントと比較しても、モバードのムーブメントはそれらに劣らず独自性を持っており、さらに言えば単純に高品質である。ハイクラスのブランド、たとえばパテックのCal.12-400(Ref,96などに搭載されている)はほかのムーブメントを圧倒している。しかしモバードにおいて真のクロノメーター機であるCal.126はヴィンテージモバードの計時専用ムーブメントの究極版であり、パテックのCal.12-400と肩を並べる存在である。

a movado movement diagram
モジュール構造のモバードCal.95M。

 この時代においてモバードがムーブメントを外注していたのは、クロノグラフムーブメントであるCal.90MとCal.95Mの開発だ。フレデリック・ピゲは10.25リーニュのCal.150MNと同じ構造を持つ12リーニュのモバードムーブメントをもとにしたモジュールを設計した。それぞれ1936年と1939年に導入されたCal.90MとCal.95Mはこれまでに生産されたモバードでも最もコレクタブルで、魅力的なコレクションを形成している。

 12時間積算計を備えた同世代の3レジスタークロノグラフムーブメントと比較しても、Cal.95Mのパフォーマンスは非常に優れている。ムーブメントの評価は単純に仕上げを見ればいいというものではないが、モバードとパテックのみが面取りされたクロノグラフパーツを備えていることは、非常に際立った特徴である。

vintage movements
(左から)モバードのCal.95M、ユニバーサル ジュネーブのCal.265、ブライトリングのサインが入ったバルジューCal.72、オメガのCal.321(レマニアCal.2310)、パテックのCal.13-130(バルジューCal.23)。

 モバードは1945年のバンパー式“テンポマチック”に始まり、1956年のフルローター式の“キングマチック”に至るまで幅広いレンジで自動巻きムーブメントを開発した最初のスイス時計メーカーのひとつであった。一連のムーブメントには特筆すべき内角の仕上げはないが、このムーブメントに出合うとその全体的な雰囲気に圧倒され、特にフルローターのデザインに感嘆してしまう。私はこれまで、モバードのローターに見られるカーブした“S”の形状は、蛇の形をしたかつての“クリス”クロノグラフ針を参照しているものと思っていたが、実際にはこの形状は実用的なものであったようだ。当時バンパー式の自動巻きでは“S”形がバネのように働き、ローターの衝撃を和らげると考えられていた。モバードはこれを特許取得し、“Futuramic”と名付けた。

two movado automatic movements
(左から)モバードのCal.115 “Futuramic”、モバードのCal.538 “キングマチック カレンドプラン”。

ケースについて:知っておくべきメーカー
 今日では“自社製造”の概念がマーケティング戦略の一環となっているが、20世紀中ごろには外部委託が業界の標準だった。時計ブランドはケースを製造する能力を持っていたが、多くの場合それらのケースはカタログのなかでも低価格帯のモデルに使用されていた。最高級のモデル用には、ケースの専門業者に製造を依頼していたのである。この方法で運営していたのはパテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲなどのブランドであり、モバードも同様であった。実際、モバードは現在でははるかに大きく、名高いこれらのブランドと同じように専門の業者を使用していた。

a Movado chronograph
Cal.95M クロノグラフ搭載のサブシー Ref.95 704 568。ボーゲル社製ケース。1960年製。Image courtesy of Sotheby's

 特に注目すべきはモバードの防水ケースであり、Cal.95M搭載のサブシーやアクヴァティックに使われたケースはフランソワ・ボーゲル(François Borgel、ときにはタウベルトとも呼ばれる)社に委託していた。ケースバックの内側に“FB”の刻印があるこれらのボーゲル社製ケースは、この時代のモバードにとって最もコレクタブルなモデルを生み出した。この時代の“防水”時計ケースのなかでも、ボーゲル社のレベルはほかのメーカーとは一線を画していた。パテックもグレイルレベル(聖杯レベル)のRef.1463、Ref.1485、Ref.1591、Ref.2451、Ref.565などのモデルでボーゲル社に依頼しており、その例を挙げるとキリがない。

 パテックとのつながりをさらに深掘りすると、パテックのRef.2499、Ref.2552、そしてSS製Ref.130のケースを製造したウェンガー社もモバードと契約していた。ウェンガー社はパテックのRef.2552やジルベール・アルベール(Gilber Albert)のデザインによる構造的に難しいケースを手がけたことでも知られており、特に独創的なデザインを得意としていた。通常、ウェンガーが製造したモバードのケースはカレンドプラン、キングマチック、ジェントルマンといった最高級のゴールドモデルに使用されていたが、同時にジェントルマンのようにカタログのなかでも“そこそこ”際立った意匠のものも製作していた。

a Movado Calendoplan
カレンドプラン アンチダスト スポーツ Ref.8137。ウェンガー社製ケース。1950年製。Image courtesy of Christies

A Movado catalog
1961年のモバードカタログの1ページ。

 モバードのケースメーカーとしてさらに挙げられるのは、ファーブル&ペレ(Favre & Perret)社とC.R.スピルマン(C.R. Spillmann & Co.)社である。ファーブル&ペレ社はオーデマ ピゲのロイヤル オーク Refr.5402の初期開発に携わり、ジェラルド・ジェンタと共同で作業を行うなかでパテックのRef.3940、ノーチラス Ref.3700の一部、そしてのちのエリプスのケースも製作していた。しかしスピルマン社も劣らず、ロレックスのオイスターケースや、ヴァシュロン、AP、ユニバーサルなどのさまざまなケースを手がけていた。

A Movado chronograph
Cal.90M クロノグラフ搭載、Ref.R9043。ファーブル&ペレ社製ケース。1950年ごろ製造。Image courtesy of Shuck The Oyster

文字盤について:ファブリーク・デ・カドラン・スターン・フレール
 モバードが最高のサプライヤーのみを使用するというこの議題について、文字盤製造のために頼ることができた合理的な相手がスターン・フレール社(Stern Frères)の巨匠たちであった。このヴィンテージ期においてモバードは自社で文字盤を製造することもあったし、ほかのダイヤルメーカーに依頼することもあったが、私が観察した文字盤の大半は裏側にさまざまな数字のコードや星の刻印が押されていた。これらのコード、特に1950年以降によく見られる星の刻印は、その文字盤がスターン・フレール社によって製造されたものであることを示している。

A Stern catalog
1965年ごろのスターン・フレール社の文字盤カタログ。Image courtesy of "The Dial" by Dr. Helmut Crott

 スターン・フレール社は時計業界で「あなたの好きな時計師が最も信頼していたダイヤルメーカー」と言って差し支えない存在であった。思い浮かぶ重要なヴィンテージ文字盤のほとんどはスターン社の手によるものである。たとえばロレックスのRef.6062やRef.1016、さまざまなストーンダイヤル、そしてパテックのRef.1518、Ref.2499、Ref.2526などがそれに該当する。スターン社について深く掘り下げたいなら、モバードに関する多くの情報も含まれているヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)による名著『The Dial』を強くおすすめする。

a movado calendomatic
カレンドマチック Ref.16201。スターン・フレール社製文字盤。1945年ごろ製造。Image courtesy of Jacob Hillman, @hillman.watches

a movado chronograph
サブシー Ref.19038。クロノグラフムーブメント、Cal.95M搭載。スターン・フレール社製文字盤。1945年ごろ製造。

A Movado dial
Image courtesy of "The Dial" by Dr. Helmut Crott

 スターン社製モバードの文字盤自体は非常に優れたものであり、その時代における最高峰といえる。しかし私が特に気に入っているのは、スターン社とモバードの関係が生んだふたつの最も有名な文字盤だ。ひとつ目は聖クリストファー(St. Christopher)を描いたもので、ギヨシェ彫りを得意とする文字盤製造会社であるラ・ナショナル(La Nationale)社に発注された。このラ・ナショナル社はスターン社のすぐ隣に位置していた。しかしラ・ナショナル社の職人の不幸な死により、同社はこの宗教的でお守りのような文字盤約50枚を完成させることができなかった。そこで1971年にラ・ナショナル社のこの一連の文字盤製作をスターン社が下請けし、特殊なギヨシェ彫りのための7台の機械と300種類のデザインパターンをスターン社に譲渡した。

 その1年後、スターン社はこれらの機械とパターンを使用して現在タペストリーと呼ばれる技法を開発し、ジェンタと協力してRef.5402 ロイヤル オークの文字盤を生み出した。1976年、ジェンタは彼の新たなプロジェクトであるパテック フィリップの文字盤にも同じようなスタイルを求めてスターン社と再び手を組んだ。スターン社は10種類のタピスリーパターンを提案したが、そのすべてがラ・ナショナル社から受け継いだパターンに基づいたものだった。そして最後はアンリ・スターン(Henri Stern)自身がRef.3700 ノーチラスの最終的な仕上げを選択した。

2023/09/22(金)


パテック フィリップ ステンレススティール製Ref.1463 クロノグラフ。
パテック フィリップのRef.1463 クロノグラフはいつ見ても魅力的な時計だが、これは特に興奮を覚える1例である。ケースがSS製であるだけでなくダイヤルもツートンで、さらにインデックスにはブレゲ数字があしらわれている。これ以上のものはなかなか見つからないだろう。今回は時計談義に花を咲かせるためにこの素晴らしいSS製1463を詳しく紹介する。

SS製1463を手首に着用。

1463はパテックフィリップ コピー初の防水クロノグラフであり、一般的なスナップバックケースではなくスクリューバックケースを採用している。同リファレンスは1940年に登場し、1965年ごろまでラインナップに残っていたが、その25年間で製造されたのはわずか750本程度であった。そのほとんどは以前紹介したイエローゴールド製の1463だが、SS製モデルも存在している。数少ないSS製の1463はリファレンスの存続期間中に散発的にしか生産されず、予想どおりの展開だが、そのためダイヤルやケースにおいても比較的幅広いバリエーションが存在する。

ブレゲ数字とツートンダイヤル。

ジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏の著書『パテック フィリップ スティールウォッチ』には、17本のSS製1463がカタログに記載されており、最も古いものは1941年、最新のものは1951年のものである(ただし、製造は1960年ごろまで続いていた)。これらの17本のなかにはシルバーダイヤル、ブラックダイヤル、ツートンダイヤル、そしていくつかのマイナーバリエーションが見られ、リーフ針、ドフィーヌ針、さらには夜光針までもが含まれている。我々がここで紹介する時計は、ゴールドバーガー氏の本には掲載されておらず、1945年製の時計(286-287ページ)と1949年製の時計(290-291ページ)に見られる特徴を組み合わせたものである。


サンバースト装飾のプッシャーとシャープなケースエッジ。

このSS製ケースは良好な状態で、下向きのラグにはシャープなエッジが残っており、クロノグラフプッシャーの先端にあるサンバーストの装飾がとても鮮明に残っている。ケースサイズは35mmだが、薄くフラットなベゼルのため実際にはやや大きく感じられる。この時計の魅力のひとつは、SSケースながら非常につけやすく快適である点だ。

ブレゲ数字とツートンダイヤル。

SS製のケースだけでも十分に興味を引くが、この時計を際立たせているのはやはりダイヤルだ。12時と6時位置にローマ数字やアラビア数字が配され、そのあいだにバトンインデックスが入る一般的なレイアウトではなく、このモデルのダイヤルにはすべてブレゲ数字が植字されている。さらにタキメータースケールを備えた外側のリングはやや濃いシルバー色で、これにより“ツートンダイヤル”となっている。


SS製パテック フィリップ Ref.1463。

ヴィンテージのパテック フィリップについて話すとき、この時計は熱心なコレクターたちの心を高鳴らせるだろう。類似モデルが2013年11月のクリスティーズ・ジュネーブで約50万ドル(当時の相場で約4950万円)で落札されており、2011年にはさらに高額で取引された個体もある。ブレゲ数字を備えたスティール製1463は(書籍やオークション、オンラインで)公に登場したものはおよそ20本程度だが、おそらくまだ発見されていないものもいくつか存在し、近いうち公に出てくるだろう。我々が紹介するこのモデルは、これまでオークションに出たことがない個体だ。

この時計はアメリカ国内のプライベートコレクションに属しているため、販売先を紹介することはできない。しかし、以下の写真ギャラリーを楽しんでほしい。スティール製1463を所有するのとは違い、これを見るだけなら50万ドルの出費は必要ない。



2023/09/21(木)


最高の時計がそろうラウンドアップとなっている。
ロレックス デイトジャスト Ref.1601、1973年製
Rolex
 ロレックスが長年にわたりデザインに大きな変更を加えてこなかったことを批判する人は多いが、それこそがこのブランドの魅力だと私は主張したい。同社がセオリーから外れたデザインを採用する際、特に評価の高いフォルムにおいてそのインパクトは一層際立つのである。その顕著な例のひとつが、ロレックスがベストセラーモデルに木材や石材などのエキゾチックな素材で作られた文字盤を装着した場合である。

 今回紹介するのはデイトジャストだが、ただのデイトジャストではなく、その美しいマラカイトダイヤルが物語るように特別な1本である。かつてマラカイトはそこから抽出される銅の採取のために重宝されていたが、その緑豊かな輝きからのちに装飾用の石としても選ばれるようになった。Ref.1601はこのモデルの系譜で初めてストーンダイヤルを採用したリファレンスであり、同時にデイトジャストを現在のアイコンたらしめたモデルでもある。この個体は非常に良好な状態で保存されており、それは厚みのあるケースと完璧なダイヤルを見ても明らかである。

Rolex
 この時計はあらゆる意味で真のレアウォッチである。しかし“レア”という言葉が明確な説明もなく使われることが多いため、今回はこの時計がなぜ“レア”であるかを簡単に説明しよう。まず第1に、ロレックスは歴史的にクラシックモデルの特別なバリエーションを意図的に少量生産することで、その特別性を強調して価値を維持してきた。さらに見逃せないのは、ストーンダイヤルは製造過程で高い破損率を伴うために量産が非常に難しいという事実である。タグホイヤースーパーコピー言い換えれば単に岩を切り出し、その端を整えるだけでは済まないということである。

Rolex
 この時計はアーティストであると同時にコレクターでもあり、Talking Watchesの出演者でもあるフィリップ・トレダノ氏が、自身のコレクションから提供している。価格は4万ドル(当時のレートで約320万円)で、詳細は彼のInstagramからチェックできる。

ホイヤー スキッパー Ref.7754
Heuer
 それほど前のことではないが、コレクターズアイテムとしてのホイヤーの市場の変遷について議論したことがある。そしてそのあとも、私の見解は大きく変わっていない。その要点を述べると、投機的なコレクターが誤った理由で参入した一方で一部のオークションハウスが誇大広告戦術を推し進めた結果、コレクターとその周辺が利益を得ようと現金化を図り、結果として市場は質の高い在庫であふれかえったのである。ほとんどのモデルの価格は値崩れして現実的なレベルに戻ったが、その希少性ゆえに依然として強い価値を保っているものもある。次に紹介するのはコレクターたちが夢見て手に入れたいと願う希少な時計であり、まさに見逃せない好機と呼べるものになっている。

Heuer
 ヨットレースをインスピレーション源としたスキッパーはかつて知る人ぞ知る存在だったが、そんな時代はとうに過ぎ去った。現在ではヴィンテージホイヤーシーンにおける“イットウォッチ”であり、その理由も明白である。まず第1に70年代を象徴するあのカラーコンビネーションはほかのどの時計にも見られるものではなく、基本的に控えめな表情のカレラをサイケデリックな領域にまで引き上げている。さらにその極端なまでの希少性もまた魅力の一因であり、この点でもこの時計は相応の価値があると思う。存在が確認されているのはおおよそ20本程度であり、これが売れた後にグレーマーケットでロレックスのデイトナ並みに同じものがすぐに供給されることは期待しないほうがいい。

Heuer
 これほど希少な時計に関してはコンディションはほとんど関係ないという人もいるかもしれないが、そんな主張は明らかに間違っている。全体的には非常に良好な状態だが、いくつかの点には注意が必要だ。具体的にはケース側面の10時位置に小さな穴が空いていること、クロノグラフの針が色褪せていることや、ダイヤルの9時位置付近に小さな傷跡があることなどだ。それ以外は未研磨のきれいな状態であり、ほかの個体で見られるような夜光塗料周辺の変色もない。このような“ほかに同じコンディションのものは見つからない”ような場合で、ホイヤーのスキッパーのなかで特に素晴らしいモデルを求めているならこの機会を逃す手はないだろう。最近公開されたスキッパーのオークションのうち、ボナムズでの2回のオークションではそれぞれ8万ドル(当時のレートで約640万ドル)と10万ドル(当時のレートで約800万ドル)を超えていたことも注目に値する。したがってこれらの市場がその後劇的に変化したかどうか、この時計についてさらに詳しく調べる価値があるかもしれない。いずれにせよ、非常に希少かつクールな時計であることには変わりない。

 Analog Shiftはこの希少なスキッパーを6万ドル(日本円で約480万円)で販売している(記事執筆当時)。詳細な情報についてはリンクをクリックして欲しい。

シーマ Cal.234
Cyma
 ブランドのデザイン能力の高さは、そのラインナップでも最もシンプルな作品で判断できることが多い。私がシーマに初めて出合ったのは見事なギルトダイヤルを備えたメーカー初期のタバンのクロノグラフで、時計メーカーとしてのシーマへの評価が高まるにつれて彼らの計時用モデルにも興味を持つようになった。洗練された手巻きキャリバーで駆動し、センスよくスタイリングされたこれらの時計には好きにならない理由が見当たらない。もちろん、このピースも例外ではない。もし小振りな時計をつけることに抵抗がなければ、このピックアップは優れた選択肢であり、しかも比較的手ごろな価格で手に入る。

Cyma
 この時計の時・分針は私が気に入っている特徴のひとつであり、ヴィンテージのシーマのシーンにどっぷり浸かっていない限りは、ほとんど見たことがないようなデザインだろう。幅広い長方形のベースから急激に細くなるこの形状は“シリンジ型”と簡単にラベルを貼ることもできるが、それでは数えきれないほどの針の形状を無視することになる。これは“キュビスト”型ハンズとして知られ、小さな四角形がそれぞれ異なる幅を分けているのが特徴である。この針は非常に少数の時計にしか見られないため、これらの特徴を備えた時計に出合うといつも興奮する。

Cyma
 コンディションに関していえばこの個体は非常に素晴らしく、未研磨のSS製ケースにはほとんど使用感が見られない。売り手はこれを新古品と説明しているが、(以前にも言ったかもしれないが)この用語は本当に1度も日の目を見たことのない完璧な時計にこそ使われるべきだと思う。この時計には当時の純正レザーストラップがすでに装着されており、それにマッチするバックルとシーマの吊り下げタグも付属している。このブランドタグがこの時計オリジナルのものである可能性はあるが、すでに魅力的な時計の魅力をさらに高めるために付属品が追加されるというのはこれが初めてではないだろう。幸いなことに、価格は非常にリーズナブルである。

 ポーランドのeBay販売者はこの時計を999ドル(日本円で約8万円)で出品している(記事執筆当時)。リンクをクリックしてチェックして欲しい。

ロンジン クロノグラフ Ref.7414、1967年製
Longines
 私のロンジン収集に関する基本的なルールに、“ダイヤルに翼のある砂時計がある場合はスルーする”というものがある。冒涜的な偏屈者と呼んでくれても構わないが、それが私のスタンスなのだ。確かにこれが1889年にさかのぼる豊かな歴史を持つ時計メーカーの最初のロゴであることは理解しているが、このエンブレムがあることで時計の全体的な外観が変わってしまっているのも事実だ。ダイヤルにこのエンブレムが頻繁に使われ始めたのは40年代で、60年代にはすでに完全に定着していた。その時点でブランドは従来とまったく異なる存在となっていた。しかしこうした背景を持ちながらも、特定のモデルは例外として私の増え続ける“ヒット(狙い目)リスト”に名を連ねることがある。この時計もそのひとつだ。

Longines
 Cal.13ZNと並び、ロンジンのCal.30CHは今なおクロノグラフのベンチマークを示し続けている。機械的にも構造的にもこれは真の芸術作品であり、非常に読みやすく簡潔に情報を伝達してくれる。この2レジスタークロノグラフキャリバーはフライバック機能も備えることでその機能性にさらに拍車をかけており、連続する複数の瞬間をスムーズに測定することが可能である。私はフライバックを“究極のバーベキュー用コンプリケーション”と冗談で呼んでいるが、おそらくもっと想像力豊かな用途を思いつく人もいるだろう。Ref.7414はこのムーブメントを格納するための優れたホームであり、真のコレクターたちの目には、ロンジンの偉大なデザインの最後のひとつに映っている。

Longines
 この特別な個体はよりコンディションに優れたものであり、1度も研磨されたことのない18KYG製ケースを特徴としている。SS製のモデルと同様にこのダイヤルにはテレメーターとタキメーターの目盛りが赤と青であしらわれており、控えめな時計にポップな色彩を添えている。ロンジンによるとこの時計は1967年にイタリアで最初に販売されたことが確認されており、私自身も現在市場に出ているYG製Ref.7414のなかで最も美しい個体だと確認している。

 イタリアのコレクター、@matt.watchesがこのクロノグラフを5500ユーロ(当時のレートで約66万円)で提供している(記事執筆当時)。

ヴァシュロン・コンスタンタン ヒストリーク Ref.47101、1992年製
Vacheron Constantin
 今回の記事を締めくくるために、少し新しめではあるがそれでも十分に魅力的な時計で終わりたいと思う。この時計に数年間にわたり魅了され続けてきたが、それはその美しさだけが理由ではない。かなり長いあいだ、これは時計シーン全体で最も優れた価値を持つ時計のひとつだとされてきたが、この事実はまだ多くの人に知られていないようだ。90年代に見られたその他多くの素晴らしいリファレンスにも同じことが言えるが、この時代からひとつ選ぶとすれば私はこの時計を推奨したい。その理由を述べよう。

Vacheron Constantin
 ヴァシュロン・コンスタンタンのヒストリークコレクションが、コレクターたちからの評価が高いデザインを忠実に継承し続けている点には常々感心している。これらの時計は復刻と再解釈のあいだに位置し、オリジナルの素晴らしさを損なうことなくハイブリッドな現代化を遂げている。Ref.47101はその完璧な例であり、Ref.4178に忠実なプロポーションで敬意を示しながらも同様に洗練された内部機構を備えている。ヴァシュロンはこれらの時計にレマニアCal.2310をベースにしたCal.1140を搭載しており、ご覧のとおり聖なる三位一体の手巻きクロノグラフに期待される仕上げが施されていることがわかるだろう。

Vacheron Constantin
 ホワイトメタルのケースやブラックダイヤルのバリエーションはプレミアム価格がついているが、このような構成の個体は本当に過小評価されている。状態や付属品の完璧さにもよるが、一般的に1万5000ドルから1万8000ドル台(当時のレートで約120万円〜144万円)で取引されることが多い。これは、非常にお値打ちな時計であることを示している。念のために記憶を呼び覚ますために言っておくと、これは36mm径のヴァシュロン・コンスタンタンのクロノグラフであり、史上最高のクロノグラフキャリバーのひとつを搭載しており、最高の基準で仕上げられている。それがサブマリーナーのマットダイヤルモデルと同じ価格帯(当時)手に入るのだ。サブマリーナーを否定するわけではないが、これには頭をひねらざるを得ない。

 このクロノグラフはクリスティーズオンラインオークションに出品されており、3万〜5万香港ドル(当時のレートで約41万4000円〜69万円)という控えめな予想価格で提供されている(記事執筆当時)。この範囲内で手に入れるのは難しいかもしれないが、それでもお得な買い物になる可能性が高い。

2023/09/01(金)

My Diary Version 1.21
Written by 中村邦夫 CGI提供じゃわ