「戯曲」とは、小説のような地の文がなく、登場人物が話すセリフとその状況を指定するト書きから成り立っている作品のことです。
誰もが知るシェイクスピアをはじめ、チェーホフ、イプセン、ワイルドなど、数々の有名な劇作家たちの作品は時代を超えて愛され続けています。
この『戯曲の叡智カード』は、1カード1作品としてそれぞれの戯曲のエッセンスを1枚の絵に表現していったものです。オラクルカードとしてお使いいただけるよう、メッセージと作品解説を収録した解説書付きです。
戯曲に馴染みのある方はもちろん、あまり触れたことのない方にもお使いいただきやすいよう、各作品が簡潔にわかりやすく解説されています。ぜひこのカードを入り口として、味わい深い戯曲の世界をお楽しみいただくと同時に、そこに秘められた叡智を受け取ってください。
「小説」とちがう「戯曲」のすばらしさは、単にストーリーを語るのではなく、私たち人間の心に秘められた複雑さや狂おしさ、すばらしさによって展開されるドラマを劇的にえがいているところにあります。
「愛おしい」とか「愛されたい」といったシンプルな感情がいつの間にか「憎しみ」に変化することもあれば、「誰かを助けたい」という純粋な気持ちが、そのために誰かを犠牲にしなければという歪んだ使命感に至ることもあるでしょう。
けれどもそれこそが人間という生き物であり、人間を人間たらしめている所以だと、戯曲は私たちに教えてくれています。
複雑に変化する心模様は、現代を生きる私たちも全く同じ。だからこそ戯曲には人々を惹きつけて止まない魅力が溢れているのかもしれません。
有名なシェイクスピア作品はもちろん、フランス、ロシア、アイルランド、ドイツ、ノルウェーなどさまざまな国の作品を多数収録しました。
『ロミオとジュリエット』『ハムレット』といった聞き馴染みのある作品から『桜の園』(チェーホフ/ロシア)や『西の国の伊達男』(シング/アイルランド)といった作品も網羅しているので、カードを引きながら、さまざまな時代、そしてさまざまな国の作品に触れることができます。
カードは、それぞれひとつの作品をテーマに描かれています。各作品を象徴するドラマチックなシーンやモチーフからを描き出したイラストは、演劇の宣伝美術や背景イラストなどを手がけるアーティストであり、女優としても活躍されている荒巻まりのさんによって制作されました。
舞台作品のポスターなども手がけ、演者ならではの視点も持つ彼女のイラストは、作品の世界観、そして物語の芯を鮮やかに描き出しています。
一九五一年、大阪府池田市に生まれる。新国立劇場演劇研修所第8期修了。 「すべてのものがありたい姿であれるように、それぞれの持つ物語を表現する」をテーマに、イラストレーター・デザイナーとして雑貨・書籍のイラストや公演チラシを制作している。